第10章 卒制の勝者にインタビュー
伊澤徹さんに聞く (2006年度卒業生 優秀賞)
伊澤さんは現在、株式会社スタートトゥディでWebデザイナーとして働いており、国内最大級のファッションECサイトに関わるすべてのデザインや、会社内のパンフレットや資料など、社内の製作物を担当しています。もともとファッションに興味があったという伊澤さんは、学生時代に大学のダンス部に所属しており、卒制ではダンサーの視点から新しいダンスウェアを制作しました。インタビューのため2年ぶりに再会すると、伊澤さんは柔和な笑顔と丁寧な物腰により一掃の磨きをかけていました。そして「卒制の事はもう忘れました」と言いつつ、社会人らしい礼儀正しさで当時の出来事を振り返ってくれました。もしかすると、過去に未練を持たないのは、卒制の勝者の共通点なのかもしれません。しかしそこに食い下がり、ソフトな対応の奥に秘められた意志の強さと手堅い実行力の秘密に迫っていきたいと思います。
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(1) 就職を決めたのは11月
―ご無沙汰しております。もうすっかり社会人ですね。会社生活はどうですか。
「おかげさまで忙しくしております。会社の平均年齢が27歳なので活気があるし、いろいろな仕事があって。最近ではZOZOPEOPLEというサービスも立ち上がり、お客様からも好評を得ているようで嬉しいです。見ていただけましたでしょうか?」
―メールを頂いてすぐ見てみましたよ。オンラインのお洋服の通販とミクシィが混じった感じ?
「もっとファッションを中心に発信できる感じですね。人気ブランドのデザイナーだったり、よくファッション雑誌に載っている業界の著名人なども集まっていますよ。もちろん僕のページもありますので是非」
―そう。今度検索してみます。ところで、私の手持ちの写真の中に、伊澤さんが3年生の時に何か美味しいものを差し入れてくれた一枚があるのですが、あれは何だったのでしょうか?
「産学協同の授業で作ったおやつが余ったので、杉原先生のところに持っていきました」
―そうでしたか。ありがとう。さりげないホスピタリティですね。さて、伊澤さんは、いつ就職が決まりましたか?
「はじめての就活で確か、11月くらいに。準社員としてでしたが」
―11月までは何をしていましたか。それまで、卒制の準備に集中していて、いざとなってぱっと就活に切り替えたのでしょうか。
「就職活動に対して焦りがなかったので、何もしていませんでした。ポートフォリオも作っていませんでした。どうにかなるだろうと。甘い考えをしていましたね。うーんひどい。ただその就職活動には全力で挑みました。2週間くらいは就職活動のために、夜遅くまでポートフォリオを作って、就職課に初めて相談に行って、とにかくそれだけに動いていた気がします」
―そして就職が無事に決まり、研修期間を経て、現在は正社員になったんですよね?今、私の手元には2007年度の学生たちがいつ就職を決めたのかまとめた極秘データがあります。この資料を卒制の結果と合わせて参照すると、当時、優秀賞を受賞した7人中、3人が4月に就職を決め、2人が7月に就職を決めています。就職の内定の早さと卒制の質には相関性があるのではないかと私は考えています。つまり、早く就職を決めた人ほど、卒制に集中できるのではないかと。奨励賞をもらった人たちも全員、夏までに内定をもらっています。そう考えると、伊澤さんが就職を決めたのはわりと遅いほうですね。
「そうかもしれません。周りを見ても、2、3年から就職に向けて準備している人は4月に内定をもらっていました。自分の場合は何も考えていないというか、動き出すきっかけを漠然と待っていた感じです。就職に関しては現実に社員じゃなくてもアルバイトという道もあるので、よっぽど困らない限り仕事は決まるだろう、と思っていました。自分が本当にやりたいことが見つかった時に動けばいいので、何をするのかわからないんだったら可能性のあるところに行きたい。でも自分はデザイナーとして生きていくということは決めていました。それまではツテを頼り、運命を信じていくしかない、と。11月にそろそろ具体的に決めなきゃいけないと思い立ったんです。あせりもあったし、家族にも言われまして」
―就職しないさい、と?それとも卒制は何するの、とか?
「その両方です」
―それまではあせってなかったの?
「サークルが忙しかったので。10月の大学祭で踊るのが最後だったので、それまでは夏休み中もダンスで忙しくしていました。前期は大学の教室のソファーで寝ていました」
―そうなの?でもいつもゼミは欠かさず出席していましたよね。いつもゼミのテーブルの長辺の中央に陣取っていて、遅刻もなく、疲れも見せず、ワークショップの日にもきちんと準備した内容を発表していた記憶がありますが。
「自分の中で『締め切りは守れよ』というルールがあって、マイペースだけどだらだらしすぎない。人のペースは気にしつつ気にせず、与えられた時間の中で最大限の力を出したいという思いはありました。他人を意識するのではなく、自分が設定した期間の中で決めるときは決めようと思っていたので」
―そのあたり、伊澤さんは自己管理が徹底していますね。(つづく)





