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3-6.誰も教えてくれないお金の話


美大ではお金のことを口にするのはタブーだという風潮があります。基礎教育を重んじる創造の場では、材料費はもとより、アートやデザインにまつわるお金儲けの話をするのはけしからん、というわけです。そこで、アートマネジメントやマーケティングといった一部の授業をのぞいて、美術にまつわる予算の使い方はほとんど教えてもらう機会がありませんでした。

唯一、学生がお金について公に口にするのは、課題のために特定の材料を購入する場合と、グループ展示で共同のスペースを借りる場合だけです。なぜ、大声でお金のことを語ってはいけないのでしょうか。その根底にはこんな考え方が根付いているからでしょう。
「才能がなければ、いくら大金を投じて作品を作っても、結局は駄作に終わる」
この才能の部分を、インスピレーション、アイデア、センスと言い換えても構いません。
つまり、才能が美術を支配すると考える人は、「安価で少量の材料でも素晴らしい作品を作ることが出来る」と信じているのです。

確かに美大に入学するまでは、この考えは教育効果を発揮します。初めから高価な絵の具を使ってキャンバスに下手な絵を描き散らすよりは、木炭で紙にデッサンしたほうが力がつく、という説明は、受験生の技量にも親御さんの懐にも優しいからです。基礎学力を固める時期はそれでもいいのです。

しかし、卒制は応用の時期です。学生たちにその自覚があるかは不明ですが、既に練習の時期は終わり、本番で力を発揮する時期へと季節は変わってきているのです。この期に及んでローコストの才能論に縛られていては、新しい作品を生み出すことは出来ません。ここでは、次のような思考に移行するべきなのです。

「才能の有無に関わらず、大金を上手に使わないと結局は駄作に終わる」
つまり、アイデアやセンスが幾らあっても、お金の使い方を知っていなければ卒制を具体化する話になりません。多くの学生は卒制という特別な規模の予算の執行に慣れていないので、ぎりぎりまで予算を使わずに取っておき、あげくの果てにぶっつけ本番で制作するという暴挙に出ます。これでは卒制がやっつけ仕事になってしまって当然です。

それでもなお、アイデアがお金より大事だと信じる人たちは、現在のアートシーンを席巻する有名な作品を思い浮かべてみて下さい。すべて、秀逸なアイデアにもとづく作品ではないはずです。「こんな作品、自分だって作ることが出来る」と思ったことはありませんか。巨匠と言われる作家の作品であっても、下らないアイデアを巨額の予算で立派な形にまとめた作品も少なくありません。しかしここで、私たちがプロに学ぶべきことは二つあります。

「展示会で人に見せる作品には、ある程度のお金を投資するべきだ」
「展示する作品は丁寧に作る」

予算の潤沢さと丁寧さ。この二点がプロのクオリティを生み出すのです。展示会で見せる作品は練習であってはなりません。学生が授業で提出するような、お試しの小品であってはならないのです。学生はこの事実を無意識的に受け入れているので、おのずと卒制では一桁違う予算を用意して大作の制作に挑もうとします。誰かに強制されたわけでもないのに、先輩にならって予算を確保して、皆をあっと言わせる作品を作ろうとするのです。

しかしアイデアの良し悪しに関わらず、適切な時期に適切な材料を加工しなければ、初めての大作が上手に完成するわけがありません。そろそろ考えを改めるべきです。極論を言えば、「大金を上手に使うことができれば、素敵な作品が出来上がる」のです。あなたはこの定理を素直に飲み込めますか?これまでのお金に対する考え方を修正し、新たな投資感覚で挑むことこそ、卒制に勝つ秘訣なのです。

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