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5-6.意思は材料を必要とする

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数年前、北欧インテリアショップの大型販売店、イケアが日本国内にもオープンしました。
初めてお店を訪ねた時、私はその品揃えの多さと、安さと、デザイン性に驚きました。現代的でお洒落な椅子や食器類が、数百円から数万円以内で買えるのです。しかも安価で丈夫、そして豊富な色のバリエーションがそろっています。私はふと自分が担当しているゼミの学生たちの卒制を思い出しました。プロダクトデザイン学科の彼らも、イケアの品揃えと同じようなジャンルの作品に取り組んでいます。そしてああでもない、こうでもない、と1年間かけて頑張っているのです。私は半ば冗談で「もう卒制なんて作るのを止めて、全部イケアで買えばいいじゃない」と思いました。既に世の中には素敵な製品があふれているのに、彼らはなぜ、わざわざ一点物のオリジナルを作りたがるのでしょうか?

その答えは簡単です。世界にひとつしかない、自分だけの卒制を作りたいからです。美大で過ごした4年間を踏まえて、わざわざ材料を買い求めて、一から制作するのです。他人まかせにしないで、進んで苦労を買うこと。立ちはだかる壁にぶつかっていくこと。自分の弱さと向き合い、さらなる高みを目指すこと。卒制では、自己研鑽の苦しみさえ青春の通過儀礼に過ぎないのです。

卒制の醍醐味は、物づくりの錬金術を目の当たりにすることです。いくら材料にお金をつぎこんでも、必ずしも価値ある作品に化けるとは限りません。だからこそ、作者の意思が明確に反映された作品は、見るものに畏敬の念を抱かせます。美しく、確実な形。洗練された明確な研究内容。それはこの1年の間に、材料選びから完成まで誰かがひたむきな情熱を注いだ証に他なりません。

やはり、美大生にとっての最高に贅沢なショッピングとは、材料のオトナ買いと言えるのではないでしょうか。新しい材料を買う時、あなたの可能性がまたひとつ目覚めます。

今日もまた、誰かがどこかで来春の卒制に向けて頑張っています。卒制に挑む覚悟が決まったら、すぐに材料を買いに行きましょう!

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