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6-10.パンがなければケーキを食べればいいじゃない

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お菓子作りには失敗がつきものです。しかし成功するまで続ければ、失敗も数ある実験のひとつに過ぎません。
今現在、グーグルで「シフォンケーキ 失敗」と検索すると、 144,000件のページがヒットします。あの軽くて高さのあるケーキを初めから上手に焼ける人はいません。皆さん苦労しているのですね。そしてたくさんの人が「失敗した理由」をネットで相談しています。すると達人がコツを答えてくれるので、彼らは再度挑戦して成功をつかみます。

しかし、まぐれでうまく焼きあがったのかもしれません。たゆまぬ努力を続ける挑戦者たちは、制作のコツを手中におさめるべく再度シフォンケーキを焼いています。そして彼らは気がつくのです。「新鮮な卵を使うと、泡立てるのには時間がかかるけれど、しっかりとツノが立つ」とか、「うちのオーブンはパネルの表示温度よりも実際は温度が低い。扉の開閉に注意しなくちゃ」と。こうして自分なりの工夫を重ねて、挑戦者たちはレシピを自分流に書き換えるのです。成功するまで続ければ、試行錯誤はムダにはならず、ノウハウへと変わるのです。

私は「一度の失敗と二回の成功が制作手順の1セット」だと考えています。
予備実験は失敗を成功に変えれば終了しますが、本番でも再び成功する必要があります。でも既に一度でも成功を決めていれば、さらなるチャレンジ精神がわいてきます。成功と失敗のセットを複数回行うことで、そのノウハウは強固なものへと変わるのです。

とはいえ、こういったプロセスを面倒だと感じる人が多いのも事実です。出来るならば失敗することなく最初から成功したいのが人の常ではないでしょうか。つまるところ、料理のレシピとは成功する確率が高い実験マニュアルなのだと私は思っています。もし、あなたが勤勉な学生で、何度も上手にシフォンケーキを焼き上げるほど実験したにも関わらず、本番で優秀賞を逃がしてしまった場合、どうすれば良いのでしょうか。最後の手段を紹介しましょう。

題して、「パンがないなら、ケーキを食べればいいじゃない作戦」です。
かのマリーアントワネットが現代の美大生だったら、きっとこういったはずです。「卒制がダメなら、学外のコンテストに応募すれば良いじゃない」そうです。学外のコンペに卒制の作品応募して、入賞した暁には卒制の憂さも晴れるでしょう。

世の中には学生を対象としたアートやデザインのコンテストがたくさんあります。「登竜門」のサイトを見るも良し、「公募ガイド」という雑誌を講読するも良し。自分の作品が通りそうなコンペ情報を探してみましょう。
今なら、卒制の作品でそのまま応募できるコンテストとして、「SICF(スパイラル・インディペンデント・クリエーターズ・フェスティバル)」という現代アートよりのコンテストや、デザイン系の卒制作品だけを対象とした「三菱ケミカルジュニアデザイナーアワード」があります。新たな審査の観点から、自分の作品を見つめてみるのも一興だと思います。

私自身、学生時代には小規模な写真コンペから、大規模な現代アートのコンペまで応募を試み、落選したり入選したりしました。結果が出るたび本気で泣いたり笑ったりしていたのですが、今振り返ると、作品に対する自分の主観と評価者との客観とをすり合わせる良い経験になったと思っています。都心の展示会でより多くの来場者に見てもらったり喜んでもらったりするだけで、かなりの勇気をもらいました。

要は、自信をつけることが大事なのです。作品は作家の思い込みだけで制作できますが、学外での展示となると、観客に評価をもらって初めて作品として成立するわけです。美大で評価してもらえなかったら、学外の他流試合で経験を積めば良いのです。大学という枠組みから飛び出てみると、学科やジャンルといったカテゴリーを超えて、現役の学生から社会人歴の長い作家まで、年齢こそ様々ですが、同じように制作している人たちに会うことが出来ます。審査員の顔ぶれもさまざまです。その中で自分の作品を評価してもらえば、美大生という井の中の蛙状態から一歩抜け出た価値観を養うことが出来ます。各コンテストの総評では、現代社会の中でアートやデザインに今、どんな役割が求められているのかがまとめてられます。教育的背景ではなく、現在の社会背景を知った上で改めて自分の立ち位置を考えれば、この先に自分がどのような道を歩いていくかが見えてくるでしょう。

私が知る限りでは、在学中から果敢にコンペに挑戦して受賞経験を積んだ学生は、卒制でも受賞する確率が高いように思います(参照:10-1)。これは、そういう学生に才能や運のが強さがあることを示しているのでしょうか。もちろん、そういう見方も可能でしょう。でも教員の目線から見ると、決してそれだけではないと思うのです。「自分の制作した物に対してどれだけ客観評価を得る度胸を持ち合わせているか」「どれだけ審査員の欲するところに自分の作品を届けていけるか」、調整する能力に長けていたからこそ受賞するのだろうと思うのです。相手のニーズを把握できる学生ほど、卒制でも賞にぴたりと照準を合わせてきます。自分の作品を見つめなおすためにも、新しい指標としてコンテストへのエントリーを考えてみませんか。

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