ゼミの先生との相性は、意外と卒制の出来に響いてきます。先生が良き理解者である場合は、良い結果につながりますが、そりが合わない場合は最悪です。しかし、顔を合わせるのを避けていると、ますます意見が合わなくなります。師弟関係がこじれると、卒制の制作以前に、人間関係の難しさで心にプレッシャーが生まれます。
学生側に「希望したゼミの先生ではないのに」という言い分があれば、先生にも「こんな学生には来てほしくなかった」という本音があるかもしれません。
ここでは先生のタイプを4つに分けて、卒制指導の傾向を探ります。先生に振り回されずに自分の卒制をまっとうするにはどうすればいいか、あらかじめ対策をたてておきましょう。
1.テーマ指導・短期回答型の先生
先生自身が現役の作家だったりデザイナーだったりする場合、学生が選んだテーマに関して即座にビジョンが見えるようです。先生が自ら答えを導き出して、図を描きながら指導してくれます。
口癖は「こうしてみれば」「こうすればいい」「こうしなさい」。
締切までの日数に応じて、提案、指示、強要、と指導方法が変わります。
このタイプの先生に教わるメリット:学生にまったくアイデアが出ない場合、先生の指導に従って制作すればいいので、非常に楽です。
デメリット:学生のアイデアと先生のアイデアが一致しない場合、衝突と議論は必須です。単に自分がやりたいことを表現しても、先生には評価されないかもしれません。
2.テーマ指導・長期回答型の先生
先生が学者肌だったり研究者だったりする場合、学生にも念入りな調査を要求します。制作に取り掛かる前にはテーマの背景を洗い出して、そこから新たな切り口を設定せよ、とテーマ設定に重点を置く傾向にあります。
口癖は「この本を読めば何かをつかめるでしょう」「ここに行けば新しい視点が養えます」「この人と会うと何かヒントが得らますよ」先生は決して解答を教えてくれませんが、学生が自ら答えをつかめるように、それとなく手順をうながしてくれます。
このタイプの先生に教わるメリット:視野が広がり、学術的な見解を深めることが出来ます。大学のゼミの醍醐味を味わえます。
デメリット:早く結果を出したくても、途中のプロセスを省くことが許されません。調査で頭がいっぱいになり、制作に着手する頃には、アイデアが出にくい状態になってしまうかもしれません。
3.人物指導・直感重視型
先生が批評家精神に富み、論評を得意としている場合、学生のアイデアにも直感で判断を下します。「質より量、つまり大量のトレーニングが良質の結果を生む」という信念のもとに、毎回のゼミでは学生に新しいアイデアを発表させます。
口癖は「それはいい。とてもいい」「これじゃあ駄目だ。ピンとこない」「もっとこう、若者らしい柔軟な考え方をしようよ」先生の圧倒的な情報判断力に耳を傾けるうちに、何が大事で何がつまらないのかが次第にわかるようになります。
このタイプの先生に教わるメリット:毎回アイデアを出さなくてはいけないので、思考に負荷がかかる分、考えぬく力が身につきます。
デメリット:先生の判断基準が読めない場合、出したアイデアが全部却下される恐れがあります。連続して駄目だしが続くと、自分自身が嫌いになります。
4.人物指導・性格重視型
カウンセラーや養護教師のような資質をたずさえている先生の場合、学生の才能と体調を考慮して指導を行います。性格の欠点まで見抜いた上で、飴とムチを交えつつ、卒制の相談に乗ってくれます。
口癖は「あなたはこういう傾向にあるから、こういう事に取り組むといい」「今は無理しなくてもいいけれど、後で必ず仕上げてくるように」「まずは早寝早起きから」先生が大局的な見地を説明してくれるので、学生は自分らしさを追求することができます。
このタイプの先生に教わるメリット:先生は最大の理解者です。安心感と信頼を感じながら、じっくりと制作に取り組むことが出来ます。
デメリット:先生が指導のペース配分を誤った場合、学生はひとりで巻き返すことが出来ず、共倒れになる危険性があります。
以上、典型的な先生のキャラクターを4つ記しました。もっとも、実際には、先生の性格が上記のタイプに適合するのはまれでしょう。多くの先生は、複数の資質を持ち合わせています。そして、学生との関係や締切までの状況に応じて、臨機応変に指導方針を変えることもあると思います。
いずれにせよ、先生は「良かれと思って」指導しています。学生としては先生の方針が何であれ、なるべくうまく付き合って、自分の良いところを引き出してもらうしかありません。しかし、制作のペースはどうしても先生のペースに振り回されることになります。
指導のテンポが速い順番は、
テーマ指導・短期回答型
人物指導・直感重視型
人物指導・性格重視型
テーマ指導・長期回答型です。
ゼミ全体の進捗状況は担当の先生のペースが支配しますから、短期回答型のゼミが全員作品を仕上げている頃、長期回答型のゼミではテーマの最終決定にまだ迷っている、ということも在りうるのです。
卒制では、ゼミの先生と良好な関係を保つ事が出来ればベストです。しかし、互いに専門分野も興味もペースも異なる場合、指導が裏目に出るケースも生じます。どうすれば、先生のペースに振り回されずに、卒制に専念できるのでしょうか。
このウェブでのバーチャル・ゼミ担当を紹介しましょう。題して、実技指導型です。
5.実技指導型
先生が現実主義者である場合、学生には結果を求めます。始めに学生の夢や希望を聞いてから、次に、実際には何が出来るのかを尋ねます。卒制に使う金額を念頭において、材料、技法、実験方法、発注先を順に確認していきます。
口癖は「何が出来ますか」「試作から何がわかりましたか」「お金を使いましたか」。テーマに対する解答は学生自身が考えます。先生は合理的な方法を確認し、思考手順と制作手順を整理する役に徹します。
メリット:どんな研究テーマであっても、時間内に最良の答えが導き出せます。現状の把握から理想の実現まで、取り組む手順が明確に決まっているので、誰でも応用することが出来ます。
デメリット:お金を使うことに消極的な学生や、思考だけに甘んじていたい学生は、現実的な研究手順に苦痛を感じるかもしれません。
私が先生だった頃、理想のゼミ生とは、どんどんテーマを決めて自主的に制作してくる学生でした。学生がコンスタントに報告を入れてくれれば、先生としても指導しやすいし、周囲の学生も良い刺激を受けます。次の章では、杉原ゼミで実施した、確実に卒制を制作する研究手順を紹介します。





