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9-1.実践ステップ1 夢の箱を作る 実施概要

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問 あなたは何が好きですか?卒制ではどんな世界を作りたいですか?

あなたの夢を箱の中に表現してください。予算は2000円です。好きな材料を使って、1週間以内に夢の箱を作成します。箱は既存の物を使っても構いませんし、箱そのものを制作しても構いません。材料を購入した際にはレシートをもらって手元に控えておきます。
制作が終わったら大学に持って行き、友人や先生に見せます。自分の夢に形を与え、人に見せるのは気恥ずかしいかもしれませんが、言葉にしていくうちに、気がつくことがあるはずです。卒制にまつわるコミュニケーションの第一歩を、夢の箱で踏み出しましょう。
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予算:二千円
制作期間:一週間
テーマ:自由
材料:自由
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課題のねらい
卒制のテーマ選びには迷いがつきものです。何となくやりたいことがあっても、どこから手をつけていいのか分からなかったり、何から形にすればいいのか見極められなかったりするものです。卒制のテーマを始めから決定できる人はそういません。それなら、脳内に描くイメージをすべて、外に出してみてはいかがでしょうか。箱の中に、自分の可能性を表現して下さい。もやもやした思いに形を与えれば、先の見通しが明るくなります。

課題発案のきっかけ
この課題を発案するきっかけは、私自身が美大時代に制作した「夢の箱」にさかのぼります。当時、デザインの授業で手作りの作品を持参することになりました。課題のテーマは「ボーイフレンドまたはガールフレンドにプレゼントする物」でした。私はニューヨークに憧れていたので、いつか恋人とニューヨークを訪ねて、摩天楼を眺めたり、ジャズを聴いたり、窓からイエローキャブの往来を眺めたりしたいと思っていました。

そこで、雑誌に掲載されていたニューヨークの写真を切り抜いて、箱の中にコラージュすることにしました。エンパイアステートビルの夜景やイエローキャブが走る大通り、ホテルの室内の写真を切り抜き、貼っているとだんだん興がのってきて、夢中で制作を続けました。夜が明けるころには、パリの街並みの煙突や、バルセロナのサグラダファミリアの尖塔を、さりげなくニューヨークの高層ビルの中に張りこむことにも成功しました。この作品を授業で発表すると、友人たちは往年の映画のタイトルをもじって「私をニューヨークに連れてって」とからかいました。

それから8年が経ち、私はひょんなことからニューヨークだけでなく、パリにもバルセロナにも旅行する日が巡ってきました。恋人とニューヨークを巡るのはもう少し後のことになりましたが、それでも、それは自分が思い描いた世界に足を踏み入れる貴重な体験になりました。ですから、私は学生時代に作った箱を「夢の箱」と呼ぶことにしました。「心に描いたことは実現する」と言います。ゼミの学生たちにも、同じように夢がかなう日が来ればいい、と思って発案した課題でした。

のちに、マルセル・デュシャンの作品集を眺めていた時に、「旅行用手提げ鞄」という1941年の作品を見つけました。解説文には、「小型の木箱の中にデュシャンの絵や立体作品など、64点のミニチュアをつめこんだ、自作のミニチュア美術館」と書いてありました。デュシャンはこの作品を複数作り、友人や希望者に配ったあと、自分でもこの作品だけを持って、戦火のパリからニューヨークへ渡ったそうです。この写真を見たときに、デザインの講評回で先生が言っていたことが心に蘇りました。先生は、「デュシャンの作品の中に似たような箱があるから、調べてみると良い」と言っていたのです。でも当時の私には調べきれませんでした。美大を卒業して、十年少しを経て、初めて先生の真意が私に伝わったのでした。確かに、大学の先生の言うことなんて、学生にはリアルタイムで伝わらないのかもしれません。それでもいつかは伝わると願って言ってくれたのだろうか、と自戒しつつ、私も自分のゼミ生にこの課題を作らせることにしました。(リンク喜多美術館:デュシャンのこの作品が見られるそうです)

課題で判明すること
自分の好きなこと、やりたいことが明確になります。また、使用した材料、制作するペース、予算の執行具合から、卒制の制作スタイルも占うことが出来ます。毎年実施しているうちに、夢の箱で仕上げた作風は、そのまま卒制の作風につながっていることに気がつきました。次のページでは、2005年度のゼミ生の取り組みを紹介します。

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