You are here: Home // 卒制に勝つ!, 杉原研究室 // 「卒制に勝つ!」の読者から、三菱の卒制コンペのグランプリが誕生。

「卒制に勝つ!」の読者から、三菱の卒制コンペのグランプリが誕生。

Share |

三菱ケミカルジュニアデザイナーアワードは、デザイン系学生の優れた卒業制作を表彰するアワードです。昨年度の大賞受賞者である工学院大学の加藤直樹さんは、「卒制に勝つ!」の読者でした。
第11回目の三菱ケミカルジュニアデザイナーアワードの授賞式は2011年10月26日に行われました。

(写真左より、水野誠一審査委員長、大賞受賞者の森敏郎さんと加藤直樹さん、向井周太郎先生)
計296点の応募作品から、2点の大賞が決まり、そのうち1作品は、工学院大学の加藤直樹さんの「解体プロセスによる都市の再生産」でした。加藤さんは建築学科に所属していましたが、卒制に取り組む年度の9月より「卒制に勝つ!」を読み始め、制作プロセスの参考にしたといいます。

加藤さんの作品タイトルは「解体プロセスによる都市の再生産」です。
作品を紹介している工学院大学の谷口研究室のページへ

加藤さんは西新宿の高層ビルをテーマに設定し、50年をかけて徐々に解体し、形状を変容させながらビルを使い続けることを提案しました。都市そのものの解体と再利用を見据えたこの作品は、建築の視点からデザインを問い直すという点で、スケール感からして他のエントリー作品とは一線を画していました。三菱ケミカルジュニアデザイナーアワードの審査員は「作り上げたモノを元の状態に戻し再利用するという考え方が、プロダクトだけでなく、建物、街、そして都市においても当てはまり、未来のデザインのあり方をシンボリックに示している作品」と評しています。
毎年、応募のほとんどをプロダクトデザインやグラフィックデザインが占めるコンペにおいて、建築分野からの大賞受賞者の輩出は、デザインの視点に一石を投じる快挙と言えるでしょう。

実は私がこの授賞式に参加したのは3年ぶりでした。以前、東北芸術工科大学での教え子であった若槻さんが都築賞を受賞して以来、ずっと招待状が届いていたので、久々に顔を出してみたのです。グランプリ受賞者である加藤さんが、工学院大学の知り合いである谷口先生の研究室の学生だとは知っていたものの、面識はありませんでした。受賞パーティで初めて挨拶した折りに、私のブログの読者だったと聞いて驚きました。

その晩、加藤さんから頂いたメールには、「三菱ケミカルの存在を知ったのも、ブログを読んでいたおかげです」と書いてありました。卒制のブログを公開したのが2010年の6月ですから、加藤さんはタイムリーに私のページを見つけて、翌年1月発表の卒制を乗り切ったということになります。果たして「卒制に勝つ」はどのように役立ったのでしょうか?そして、新たな卒制の勝者にはどんな秘策があったのでしょうか?次回の更新に続く!


(MITSUBISHI CHEMICAL JUNIOR DESIGNER AWARD 2011 受賞者の皆さんと審査員の記念写真)

三菱ケミカルジュニアデザイナーアワード 傾向と対策

今年度も募集が始まりました。(2012年1月25日~5月21日)
我こそは、という学生さんは挑戦してみてはいかがでしょうか。
三菱ケミカルジュニアデザイナーアワード

昨年度の受賞式に臨んだ者としての感想を述べるなら、
「どの大学でも、優秀賞または奨励賞に該当するクラスの実力者が入賞している」
という印象を受けました。つまり、卒制の学内審査において、「箸にも棒にも掛からなかったけれど、学外コンペでは一発逆転をねらいたい」という人には向いていないと思います。物を作り上げる上で、相当、時間なり手間ひまをかけた作品が残っているように思えました。

第11回目の審査コメントとして、一部の審査員の先生からは「若者らしく、(会社に就職することなど考えずに)思い切りやれ」といったげきを飛ばす場面がありました。また、受賞パーティのスピーチでは、大学を中退したスティーブ・ジョブスのセリフを引用して、「Stay hungry,stay foolish.(ハングリーであり続けろ、バカであり続けろ)」と復唱して、盛り上がるひと時もありました。しかし私は違和感を覚えました。かつて大学で教鞭を取った者として、こういったあおりは学生にとって実に不適切なアドバイスです。果たして、学生に「バカになってほしい」と望む大学の先生がいるでしょうか。卒業制作とは、大学において学問を最後に修める機会なのですから、卒制で大学の教育内容を踏襲し、社会背景に真摯に対峙する姿勢は不可欠です。そもそも、大学を中退していたら、卒制を仕上げてコンペに参加できませんからね!

大学教育に力を入れていない人ほど、パーティではベンチャーの思想やら、一発逆転的な人物を引き合いに出して、景気の良い事を言ってみたいのかもしれません。つまり、大人は若者に「常識にとらわれず、社会をぶっ壊せ」といった事を語りがちですが、それはその世代の大人の見果てぬ夢に過ぎません。また、アートの発想ならまだしも、デザインや研究に果たして「一発逆転」が通用するのかというと、はなはだ疑問が残ります。

現実に、三菱のコンペに入賞したラインナップを見てみれば、膨大な時間をかけて研究した作品のみが残っていることが分かるでしょう。結果的には真面目な、そして質の高い作品しか賞に残らないのです。卒制には多くの制約が付き物ですが、大学のカリキュラムという制約を超える作品こそ、大学教育に風穴を開けます。三菱のコンペの受賞レベルを見ていると、学内で優秀賞、もしくは特別賞を受賞したレベルの作品が残ったのではないかという印象を受けます。つまり、真面目に卒制に向き合う事の出来る、底力のある作品と作者だけが、これからの日本を変えていくのではないかと私には思えるのです。真摯な取り組みが正当に評価されるという点で、私は三菱ケミカルジュニアデザイナーアワードに期待しています。加藤さんのインタビュー記事を含め、「卒制に勝つ!」の記事を久しぶりに更新していきたいと思います。

(一発逆転派にはスパイラルのSICFをお勧めします。(今年度の応募締切:2012年2月24日)
私見では、デザイン系というよりも、コンテンポラリーな文脈を無視するアートに采配が上がるコンペです。参加者の年齢もまちまちですし、エントリー料金が高いのも、博打だと思えば腑に落ちるかもしれません。
SICF(スパイラル・インディペンデント・クリエーターズ・フェスティバル)

Related articles 関連する記事

卒制に勝つ!目次
10-4.若槻千鶴さんに聞く(3) (三菱ケミカルジュニアデザイナーアワード2008受賞)
6-10.パンがなければケーキを食べればいいじゃない (学外コンペへの応募のすすめ)

Trackback URL

Leave a Reply

Copyright © 2009 Atelier OPA. All rights reserved.
Designed by Theme Junkie. Powered by WordPress.